【男4女4・100分】倉持裕 『ワンマン・ショー』

〜110分

ー 断片化された時間と空間。懸賞マニアの話。

倉持裕 『ワンマン・ショー』の上演時間・人数

上演時間 110分

人数 男4 女4

受賞歴

第48回 岸田國士戯曲賞受賞(2003年)

あらすじ

机に向かい、一心不乱にハガキを書きなぐっている男・青井あゆむ。彼は俗に言う“懸賞マニア”。しかしいくら応募してもなかなか当選することがない。
ある日の夜中、青井が顔を洗いに台所へ向かうと、それを追うように妻・紫が寝室から出て来た。「私、また、あなたの顔にヨダレを垂らしたのね」寝ている間のことは仕方がないとなだめる青井、だが紫は納得しない。
そこに紫の兄・白根赤太がやってきた。赤太は無職であり、それゆえに妹のところへ金の無心にしょっちゅう来ていたのだが、その日は、仕事が決まったというめでたい報告だった。仕事の説明を始める赤太。それは、緑川緑と名乗る女からの「私の仕向けた男に向かって、私のことなど知らないと言って欲しい」という、理解し難い依頼だった。仕事内容に難色を示す紫だったが、赤太は仕事に就けたことを素直に喜んでいた。
時を同じくして、隣に引っ越して間もない緑川黒雄が青井家を訪ねて来る。青井は、カーテンの隙間から時々こちらをのぞいている黒雄を気味悪く思っていた。何を言われるのかと思いきや、泣きながら「お宅の池が広がっている」と叫ばれ戸惑う青井。それならばと偶然通りかかった自治体サービスの“イェローさん”に相談を持ちかけた。黒雄はイェローに「似たような人が以前うちにきた」と言うが、彼女は「その人間に二度と関わってはいけない」と釘をさし去って行く。
固定資産調査員である青井は、役所へ届け出もなしに増築した疑いのある佐藤宅へ来ていた。主人に会おうと試みるが、何度来ても佐藤の妻と弟しか現れない。そしていつしか増築のことよりも、主人の不在に気を取られるようになる。ある日、偶然にもイェローが佐藤宅へサービスに来ていたのだが、そのことに気付いた従業員・灰島は逃げるように姿を消す。
イェローは青井に“必要事項以外のことを懸賞ハガキに書く”というアドバイスを与えていた。「応募するのが楽しくなった」と話す青井は、更に紫や赤太の名前でも応募し始め、彼らの悩みなども書き加えてゆくようになったのだった。
応募の甲斐あって人形が当選し、お守り代わりにする青井。赤太に人形の説明を嬉々と語っていた矢先に、青井家の玄関先に大きな段ボールが届けられているのを紫が発見する……。   (ワンマン・ショー より引用)

評価など

野田秀樹の選評

受賞作の『ワンマン・ショー』は、とても幾何学的な作品である。三つのカップルの相似関係が、微妙にずれていく。ずれていく面白さ、いわば不整合性の妙は、演劇ならではのもので、そこに大きな魅力を感じた。
緻密に論理を、組み立ててはいるが、最後までそこに拘泥すると、面白さが消える。そのことを、この作家は知っている。どこで、突き詰めた論理を捨て去るか。そのタイミングが、わかっていると思う。いわば、この作家は、文学を書く人ではなく、演劇を書く人と言っていいだろう。つまり、文学を書かない人だ。なにやら近頃、こじんまりとまとまった、文学を目指しているような劇作が多い中で、この作家の書く不可解さは、楽しみである。

第48回岸田國士戯曲賞選評(2004年) – 白水社

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