本谷有希子『幸せ最高ありがとうマジで!』

〜120分

本谷有希子『幸せ最高ありがとうマジで!』

ー題名とは裏腹に繰り広げられる変わった復讐劇 。

第53回 岸田國士戯曲賞受賞

男 2 女 4 上演時間 約120分

あらすじ

舞台は「エリートが書いたもんをヤクザが売る」とからかわれる、とある町の新聞販売所
慎太郎の留守中に、彼の愛人を名乗る得体の知れない女・明里が突然現れる。もともと慎太郎の女癖の悪さは病的とも言えたため、妻と子供たちはその話を信じ込んでしまう。が、家族は一丸となって明里の存在を無かったことにしようとする。嫉妬でおかしくなったように家に上がりこもうとする明里を、妻と息子と娘は協力して阻止。
明里は道に放り出されるが、住み込みバイト・えいみの手引きによって、なぜか敷地内のプレハブ小屋に密かにかくまわれることに。
こうして、誰にも予想できない復讐劇の幕は上がった・・・。

幸せ最高ありがとうマジで!より引用 

井上ひさし氏の選評

本谷有希子氏の『幸せ最高ありがとうマジで!』の人物たちもまた、おかしな場面を引き連れて登場します。自分が恵まれすぎていることになぜか我慢ができなくなった女性が、なんの関係もない他人の家庭へ闖入して、いきなり「わたしはこの家のご主人の愛人です」と宣言する。このメチャクチャな宣言に触発されて、一つの家庭の構成員全員が、それぞれが背負ってきたおもしろい場面を一挙に表へ押し出してくる。終息部分で少しばかり混乱したのは残念ですが、しかし、おもしろい場面が連続して表へ飛び出してくる前半から中盤にかけての、生き生きと躍動する展開に、作者の才能がまぎれもなくあらわれていました。この作品は、他人のいいところに目をつぶり、悪いところだけを指弾する、昨今の社会の歪んだ精神構造を痛烈に撃つファルスの傑作です。

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