ケラリーノ・サンドロヴィッチ 『フローズン・ビーチ』

〜130分

 ケラリーノ・サンドロヴィッチフローズン・ビーチ

 ー ナンセンスコメディの傑作。

男0 女4 上演時間 約130分

第43回岸田國士戯曲賞受賞

あらすじ

1987年、カリブ海と大西洋のあいだにある島(リゾート地。島の名前は出てこないが、現地語はポルトガル語)に建てられた別荘の、3階にあるリビングが舞台になる。別荘の持ち主は、双子の姉妹である愛と萠(ともに松永玲子)の父親・梅蔵で、千津(峯村リエ)とそのエキセントリックな友人・市子(犬山犬子)は、愛に招かれてここに滞在している。千津と愛は同性愛の恋人同士だが、実は千津のほうに愛に対する憎しみが募っており、市子と共謀して彼女をベランダから突き落としてしまう。ところが、彼女はベランダの向こうにぶら下がって間一髪助かっていた。

一方、双子の姉妹の義理の母で盲目の咲恵(今江冬子)は、萌と二人きりでいる間に彼女といさかいを起こすが、体の弱かった萌はそのさなかにあっさり死んでしまう。咲恵はベッドルームに萌の死体を運ぶ。これによって咲恵と、死体を愛のものと勘違いした千津、市子との間で滑稽な行き違いが起こる。結局、萌は心臓麻痺であったことが判明するが、千津と市子は真相を知らないまま日本に発ってしまう。

第二場は、8年後の同日、同じ場所が舞台になる。愛と咲恵は仲良くやっており、千津と市子もやってきている。しかし千津は3年間の間自分が殺人犯だと思い込まされていた恨みから、再び市子と共謀し、愛と咲恵に毒を盛る。実際には死に至るほどの毒ではなかったのだが、愛は解毒剤を求めて千津を刺してしまう。毒殺が一種の狂言であったことを市子に知らされて愛は後悔するが、切断された指がひとりでに動き出す妙なシーンのあと、千津は一命を取り留める。第三場は、さらに8年後、水没しかかっている同じ場所に集まった4人のやりとりが描かれる。

フローズン・ビーチ – Wikipedia

野田秀樹氏の選評

 ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏の『フローズン・ビーチ』これが一番面白かった。
今のむかつくという気分に、あっけらかんと正直であり、なおクレバーな作品である。特に前半が優れている。市子というキャラクターはこれまでの日本の戯曲のなかには出てきたことのない新しい狂人である。狂人の発明は、それだけで才能に値する。作品全体にも、その市子的な空気が支配している。殺意に満ち溢れているのに、結局最後までたった一つの事故死があるだけで誰も殺されはしない。そこが今の日本の、そこら中にみなぎる「くそっ、死ね!」とか「殺す!」といったコトバの気分を代表するもので面白かった。二年前の松尾スズキの作品のような疾走感はないが、現場で演劇に向き合っている戯曲だと感じた。これを推した。

第43回岸田國士戯曲賞選評(1999年) – 白水社

フローズン・ビーチ

フローズン・ビーチ

 
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