野田秀樹『オイル 』の作品概要・上演時間・人数
ー 戦時中に生きる電話交換手の娘が聞く不思議な声。『復讐』の炎が燃え上がる。
上演時間 110分
人数 13人以上 男9 女4 (初演を参考にした目安。)
野田秀樹『オイル 』のあらすじ
「もしもし、もしもし。天国があるというならなぜあの世に作るの?この世にないの?」
電話に向かっておかしな独り言を言うと言われていた電話交換手の娘・富士は、奇異の目で見られていた。時は太平洋戦争のさなか、富士の兄もまた戦争に参加するため兵隊となる。あるとき、特攻隊の飛行機が不時着し、飛んでいくための「オイル」がないかと問う。そんな富士の秘密が明らかになった時、復讐の炎は、さらに大きく燃え上がる。
コメント・感想
野田秀樹『オイル』。僕が初めて観た野田秀樹さんの作品です。これを観た時、正直、え?作者、え?普通の人?って思いました。
その時は、いわゆる天皇肯定派というか、尊王派というか、(正しい言葉が見つからない)そういう人の心情を表しているのだと思っていました。それでも、その人たちの意見をこれほどまでに正当化できるのか、と思ってすごいと思った記憶があるのですが、それは僕の未熟上の誤り。
これは、そんな単純に復讐賛成!とかそういうものじゃないと思うんです。(もちろんそう思う人がいたらいたでそれも正解だと思いますが)
この野田秀樹『オイル』と対になっているといわれる野田秀樹『パンドラの鐘』をみると、それとは全く逆に、終戦時の日本の体制に反対することが書かれていて、なるほど!と思いました。
野田秀樹『オイル』は戦争がどうだこうだ言ってるのではなくて、「戦争を風化させてはいけない忘れてはいけない」と言う思いと、でも終戦して仲良くなるためには、「相手を許して怒りを忘れなければいけない」という対立した感情の中で揺らいでいる人々を描いていたのではないかと思うんです。
大好きな脚本なのでこれ以上書いていると、本来のHPの趣旨と反するような気がするので…気がしますが書きますね。
野田秀樹さん、この『オイル』の制作過程でワークショップをやっているときに、9・11テロが起きたそうで、ツインタワーが二つ崩壊したということが、直感的に原始爆弾を二個落とされたことと繋がったそうです。野田秀樹さん自身、それが日本人にしか浮かばない発想だと思って、このオイルの完成にいたる訳なのですが、その発想がまずすごすぎる。
そして、すごいのが時代設定。野田秀樹『オイル』では、古代の日本神話の世界と、戦時中という二つの時代が練り合わされてます。フィクションを作る上で、いろいろ創作しても違和感がない古代を使うというのは野田秀樹さんはよくするそうなのですが、この『オイル』では何かが欠けた民族が作られれば面白いと考え、「時間」の欠けた民族に設定したそうなんです。そのチョイスが、原爆の「忘れる」「忘れない」の議論にぴったりとはまっていて、さすが!というか、完璧だなあ…と思わず、感嘆の息が漏れに漏れていくほどでした。
しかもしかも、野田秀樹さんお得意の言葉遊びがここにうまくフィットします。「オイル」→「老いる」…!!!時間だ。ここにも時間に関係するワードが入ってきます。
なんてエレガントな作品なんだ!と思うのですが、作品の進行自体そんなに重苦しくもなく、
ぜひ、ご一読ください!!(テンションが上がってすみませんでした。)
※ 制作過程のいろいろは、同じく野田秀樹『赤鬼』のイギリス公演の様子が書かれている「野田秀樹赤鬼の挑戦」に書かれていますので、ぜひ読んでみてください。
テンポよく進んで行きますし、そんな深い意味を考えなくても楽しめる作品です。
作者:野田秀樹について
NODA・MAPを設立し活躍する劇作家・演出家。東京芸術劇場芸術監督、多摩美術大学教授を務める。
特徴
散りばめられた言葉遊びを活かし、古典作品や既存作品を新しい視点から蘇らせるリメイクを特徴とします。
略歴
1976年、東京大学演劇研究会を母体に劇団夢の遊眠社を結成。1992年に解散するまで、脚本・演出を担当し、人気を獲得。その間に海外公演も何度も行いました。
1993年、演劇企画制作会社野田地図(NODA MAP)を設立。劇団の枠にとらわれないプロデュース公演の先駆けとなります。
番外公演として、少人数で行う舞台も行い、その作品は学生劇団や小劇場で何度も上演され続けています。
受賞歴(抜粋)
1983年、『野獣降臨』で第27回岸田國士戯曲賞受賞
1999年、『Right Eye』で第2回鶴屋南北戯曲賞受賞
2009年、イギリスのエリザベス2世女王より名誉大英勲章OBEを授与される
2011年、紫綬褒章を受章。
野田秀樹『オイル 』の台本入手方法
野田秀樹さんのオイル は新潮社から書籍化されているため、書店や通販サイトにて購入できます。
こちらの「21世紀を憂える戯曲集」の中に、オイル が収録されています。


「21世紀を憂える戯曲集」の収録内容
21世紀を憂える戯曲集には、「ロープ」「オイル」「THE BEE」の3作品が収録されています。
野田秀樹『オイル 』の上演許可について
野田秀樹さんの作品の上演許可は、NODA・MAP公式サイトに情報があります。
上演許可申請を出し、上演料を支払えば、問題なく許可を得られると思いますので、必ず上演許可を取ってから上演するようにしましょう。
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