藤田貴大『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』

上演時間不詳

藤田貴大『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』の上演時間・人数

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第56回岸田國士戯曲賞受賞作品

概要

リフレインと呼ばれるセリフの反復を用いた作品で、岸田國士戯曲賞の選考委員のなかでも多くの評が集まりました。小説的な脚本ともいわれるが、観客に想像を委ねる点で、演劇としての可能性を感じます。マームとジプシーで上演されたこの作品。受賞した時の藤田貴大さんは26才という若さでした。

カントリータウンをめぐる少女たちの心象風景をよみがえらせて、マームとジプシーが反響させる、現代口語フラッシュバック演劇。

評価など

野田秀樹氏の選評

 一番選考委員の評が集まった藤田貴大氏の作品は、故郷と距離を持つ若い人間の「感傷」をどう見るか? によって評価が変わってくる。わたしは、「感傷」と言うものには基本的に否定的だが、彼の描く「感傷」は、リフレインを使うことで、間接的なものとして、すれすれのところで成立している。そこがこの作品の成功である。よく描かれた静物画のように、「感傷」が食卓の上に置かれているのである。もしも、それがただ投げつけられていたら、この手の「感傷」は、いやな読後感がするものだが、受賞に値するだけの距離感のある「感傷」である。リフレインが、読み手に既視感を持たせ、知らずその「感傷」を共有してきた気分にさせる。近頃よく見る方法だが、発明である。惜しまれるのは、一部目の「あんこ」という役が面白かっただけに、彼女が、山(富士山)の後に、海へ行き、その後、三部目、どこに現れるのだろうと期待した。が、とうとう姿を見せなかった。それが残念だ。
 が、佳(よ)くできた「静物画」として、受賞に値する作品であることに変わりはない。

第56回岸田國士戯曲賞選評(2012年) – 白水社

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