松原俊太郎『山山』 の上演時間・人数
上演時間 90分
人数7人 男4 女3
受賞歴
『山山』は、2019年に第63回岸田國士戯曲賞を受賞しています。
あらすじ
立入禁止区域。かつてそこに暮らしていた家族が我が家に戻ると、作業用ロボットと外国人労働者による除染作業が行われていた。山に分け入る一行。山から降りてくる鬼。放蕩息子の帰還は状況に変化をもたらすのか。
労働と愛(チェーホフ)、生と死(ベケット)、あらゆる表象と紋切り型(イェリネク)、そして「アメリカ」の「偉大な」作家ハーマン・メルヴィルの『バートルビー』をモチーフに、かつては美しかった山と汚染物質の山の狭間で暮らす家族たちの新たな抵抗を描く。|KAAT 神奈川芸術劇場より引用
評価など
第63回岸田國士戯曲賞選評(https://www.hakusuisha.co.jp/news/n29840.html)より引用・抜粋
柳 美里
『山山』の背景には、1万8430人の死者と行方不明者を出した2011年3月11日の東日本大震災と、東京電力福島第一原子力発電所による原発事故がある。『山山』を読むと、除染で表土が削られた山山、除染廃棄物が詰め込まれた黒いフレコンバッグの山山、言えないことの山山、本当は言ってやりたいことの山山が押し寄せてきて、息苦しくなる。
………
「妻」「夫」「娘」「放蕩息子」「作業員」「ブッシュ」「社員」「カップル(男・女)」とは、いったいなんの役を担っているのだろうか? 『山山』における役柄の同一性は、役と役の間の台詞のやりとりでは担保されていない。役柄は何の意味も持っていないのではないか、という思いにさえ囚われる。与えられた役柄から大きな力によって引っこ抜かれてしまったような役──。そして、「あの日」とは、2011年3月11日でもあるし、取り返しがつかないことが起きた無数の「あの日」でもあるのではないか、とわたしは思い至る。
岡田利規
松原俊太郎氏の『山山』の言葉は、今回の候補作のなかでという枠に限ったものとしてでなく、戯曲一般として圧倒的だと思った。わたしは打ちのめされたので、強く推した。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
知的で冷静な怒りをそこかしこに感じ、途中で休むこともなく一気に読めた。言葉も新鮮で個性的だ。けれどこれも積極的に推すことができなかった。「どこまで読めているか」正直、自信が(今も)もてなかったからだ。
野田秀樹
さて、受賞作の松原俊太郎氏の『山山』である。私には、作家のメモにしか読めない「独白」が多用されていた。とりわけ初めの四、五ページの登場人物紹介のような「独白」の連続は、まさに作家の「メモ」であった。本来、作家は、その「メモ」を元に作品のなかで、それぞれの人物にどういう「血」と「肉」を与えるか、そこに腐心し、いわば、作家が大好きな「徹夜をして書く」べきであり、「私は相対主義の権化です」などと、登場人物のキャラクターのメモを書かれてもなあ、と思った。ところどころ台詞は光っていたけれど、おおむねステレオタイプな発想ばかりで、私がドキドキするようなことはなかった。
平田オリザ
松原俊太郎さん、受賞おめでとうございます。圧倒的な才能の登場に敬意を表します。作・演出を兼ねない作家の登場も喜ばしく、今後、様々な演出家、俳優と出会うことで、より広範な創作活動をしていただければと期待します。
選考会では、昨年の神里さんに続いて、モノローグを連ねるようなタイプの作品の受賞が続くことへの懸念が議論されました。もちろん個々の作品に瑕疵(かし)はなく、受賞そのものに異議はありません。ただ、対話型の作品、作家にも、もう少し頑張ってもらいたいとは感じました。
岩松了
これほど読むのに苦痛を伴う本も珍しい。だから何!? と言いたくなるほど体を通過しないセリフの数々。理屈のオンパレード。見られるってことについてどう感じてるの?
が、苦痛に耐えながら読み終わったとき、理屈の果てにある感情に突き当たる感覚に襲われて、そうかこれはその理屈の果てにある感情を探り当てようとしているのか、と思えてすべてを許容したくなったのだが、しかしそれがこの戯曲とは無縁の私自身の苦痛に訪れた感情にすぎないのか、それともまぎれもなくこの戯曲がもたらした感情なのか、いまだに判断がつかぬ。
作者:松原俊太郎について
神戸大学経済学部卒 小説家。劇作家。
松原俊太郎さんは、自身の劇団を持たず、自分の作品を自分では演出しないという日本では珍しい純粋な劇作家です。
京都の「地点」という劇団で松原さんの作品を上演することが多いですが、彼は「地点」の劇団員ではありません。
受賞歴
2015年、初戯曲『みちゆき』で第15回AAF戯曲賞大賞を受賞
2019年、『山山』で第63回岸田國士戯曲賞を受賞
松原俊太郎『山山』の台本入手方法
松原俊太郎さんの作品『山山」は、白水社から単行本として出版されている他、悲劇喜劇の2018年7月号に収録されています。
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松原俊太郎『山山』の上演許可について
松原俊太郎さんの作品の上演許可については、よくわかっておりません。
上演する際には、上演許可を必ず申請するようにお願いします。
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